S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
俺たちは。一番奥の大広間に通された。
働いている人数も多いので、何かと言えばこの居酒屋のこの大広間だ。

「わぁ。何だか、皆に会うのは久しぶりかも。」

すみれさんは、嬉しそうに言った。
確かに、すみれさんが遊園地を辞めて5年。
子供が小さかったこともあり、中々こういう会に出席出来なかった様だ。


部屋のふすまからは明るい声が漏れている。

ふと気付くと、すみれさんは俺の腕を掴んでいた。

「ちょっとぐらい、良いじゃない。」

いたずらっ子のように微笑むと、俺の腕に自分の腕を絡める様にさらに体を寄せる。
俺が、言葉を発する前に、すみれさんはそう言ってふすまを開けてしまった。

「久しぶり。」

引きずられるように中に入ると、上座近くだった為か、内田さんや夏川さん等、昔からのメンバーが固まっているテーブルだった。
すみれさんを知っている人は、俺が腕を組まれている事は特に気にも留めず、言葉を返している。

奥に夏川さんを見付けたすみれさんは、手を振りながら行ってしまった。
ようやく解放された俺は、スーツのジャケットを脱ぐと、空いていた内田マネージャーの横に不機嫌そうに座った。

「平畠君、すまんな。うちのに付き合ってくれたんだろ?」

『いつものこと』と言わんばかりに、内田さんは余裕だ。

「本当ですよ。」

俺は、ビールを注ごうとする内田さんにそう答えながら、グラスに手を掛けた。

「あぁ、酷い。ちょっと嬉しかったくせに。」

夏川さんと話し終わったのか、内田さんと俺との間に割り込むようにすみれさんが座った。

「若いもんをいじめない。」

そう言いながら内田さんが、すみれさんにもお酌をする。

「ヤキモチ?」

すみれさんが嬉しそうに内田さんにそう言う。

「そうだね。」

微笑みながら答える内田さんに俺は驚いた。
きっとすみれさんは、内田さんの気を引く為に、俺を利用したのだ。
そして、それに素直にヤキモチを妬いたと答える内田さん...。

女性の気持ちは分からない。(特にすみれさんは厄介そうだ)
でも内田さんは、それをもコントロールしているかの様だ。

俺は、呆気に取られたまま、ビールに口を付けた。
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