S的？彼氏の思うコト ～平畠 慎太郎side story～
喉を潤し、一息つくと、部屋の奥に安浦が居るのに気が付いた。
よく見ると、横に座った右田さんと親しげに話している。

俺は、体が熱くなっていく様な感覚に陥った。

アイツは、斉藤だけじゃなく、右田さんにも色目を使っているのか。
内容は勿論聞こえないが、耳打ちをしたりして距離も大分近い。

「どうしたの？眉間のシワ。」

その声にハッと我に返ると、すみれさんが不思議そうに覗き込んでいた。

「いや、何にも。」

俺は、テーブルに視線を動かしながら言った。
知らず知らずに、眉間にシワが寄っていたらしい。

しまった。
俺とした事が。

『アイツを見ていた』なんてすみれさんにバレたら、面白がって根掘り葉掘り聞かれそうだ。

俺は、人に詮索されるのは苦手だ。

そう思いながら、安浦の方を見ると、もう右田さんの姿は無かった。
何故か安堵感が湧き上がってくる。

すると間もなく、安浦は泣きそうな顔をして、席を立った。

何だ、あの表情は。

俺は、襖を開けて外に出るまで、安浦の背中から目を放すことが出来なかった。


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