S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
「えっと?」

安浦の視線は、言葉を捜すように泳いでいる。

「知りたい事があるんじゃないのか?」

俺は安浦を真っ直ぐに見据えた。
何を言われるのか見当もつかない。
他人の言葉にこれ程ハラハラしたことは、今まで無かった。

しかし、待てど暮らせど安浦からは言葉が出てこない。

「言いたい事があるなら早く言え。俺も暇な訳じゃないんだが?」

俺は、緊張からか苛立った様に言った。
安浦は、その言葉に小さく頷くと、重い口を開いた。

「じゃあ、平畠さんのプロフィールを教えて下さい。」

「はぁ?」

何を言われるかガチガチに身構えていた俺の予想とは、あまりにかけ離れた質問に、俺は思わず声を漏らした。
しかし、安浦の表情はいたって真剣。

俺は、眼鏡を上げると、安浦に向き直った。

「平畠慎太郎、23歳。6月21日生まれ。AB型。」

何故俺は、コイツにプロフィールを披露しているのか。
少し馬鹿馬鹿しくも思ったが、真面目に聞いている手前、ちゃんと答えた。

「大学院で心理学を勉強しているのは本当ですか?」

またしても意外な質問。
誰から聞いたのかは分からないが、大方、斉藤とか俺のことを良く知らないバイトから言われたのだろう。
他人の言う事を鵜呑みにしたのが少し気に障る。

「確かに大学院に通っているが、俺の専攻は電子工学だ。」

安浦は『へぇ』と小さく相槌を打った。

その後も安浦は『良くそんなに聞きたいことが見付かるな』という程色々な事を尋ねてきた。

俺にとっては当たり前の事が、安浦にとっては分からないことなんだと思い知った。
それは、俺も同じか。
そう思うと、必然的に真摯に答えてやろうと思った。
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