S的？彼氏の思うコト ～平畠 慎太郎side story～

暫くすると、安浦の言葉が止まった。
一瞬迷った様な表情の後で、安浦は聞き苦しそうに言葉をつむいだ。

「送別会で、平畠さんと一緒に部屋に入ってきた女の人って誰ですか？」

俺は、安浦が今までと違う雰囲気で質問したのか分からなかった。

「送別会？」

そう言いながら、すみれさんの顔が目に浮かんだ。

「ああ、あれは内田マネージャーの奥さんだよ。」

安浦が、この質問をしたのか定かではないが、俺と同じ様にヤキモチならばいいと思った。

「あの人、悪い人じゃないんだけどな。テンション高いし、距離感が無駄に近いんだよ。」

俺は、何故か言い訳がましく言ってしまったが、ホッと胸を撫で下ろす姿に、疑問が解決した事を悟った。

が、その表情は直ぐに曇っていった。
終いには、またうつむいて黙ってしまった。

「もう終わりか？」

その沈黙に耐え兼ね、口を開く。

「はい。」

安浦は、か細く答える。

この心理は誰にでも分かる。
『まだ聞きたいことがある』だ。
ことさら、安浦の単純な思考。
安易に予想はついた。

「おい。嘘はつくな。」

俺は、安浦を真っ直ぐに見つめた。

「お前が聞きたい事には全部答えるから、ちゃんと言え。」

その言葉に安浦は、すがるような目線で見つめ返してくる。

いつの間にか、俺は安浦の気持ちが分かるようになった様に感じた。