S的？彼氏の思うコト ～平畠 慎太郎side story～

「あれ？平畠、1人？」

その言葉に、ハッと我に返る。
声の主は、俺の1年先輩で社員の右田さんだった。
昔の事を考えている内に、新人を置いて来てしまったらしい。
右田さんが担当する新人も、不思議そうにこちらを見ている。

「クソッ。」

そう小さく言うと、俺は大股で来た廊下を戻った。

「おい、新人！何やってんだ！」

苛立ちのあまり、そう怒鳴りながら勢いよくミーティングルームのドアを開けた。
そこには、某然とたたずむ新人が1人。
何故、誰も居なくなった部屋に留まっているのか、俺には理解出来なかった。

「ボサっとしてると、観覧車から吊り下げるぞ！」

俺は、自分でも分かる位眉間にシワを寄せて言った。
新人は、硬直したままだ。

「働く気、あんのか？」

俺は、少しトーンを落として言葉を続ける。

「はっ、はい！」

恐らく反射的に返事をしたのだろう。何故か両腕はピシッと『気を付け』の姿勢のまま、俺に駆け寄っって来た。
一応働く気はあるらしい。

「チッ。付いて来い。」

俺は、無意識に舌打ちをすると、クルリと踵を返した。