S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
だから、教育係は嫌なんだ。

俺は、内田さんに言われた通り、入場ゲートに向かった。

俺は、遊園地で仕事をする為に働いているのだ。
決して、人材育成の為では無い。
でも、内田さんに『これも大事な仕事だよ。』と言われている。

と、次の瞬間目の前を人陰が横切り、俺は顔を上げた。
見ると、新人が進路を遮る様に立ちはだかっている。

「邪魔だ。」

こいつは、とことん俺を怒らせたいのか?
その行動が、全く理解出来無かった。
だが何故か、新人も厳しい表情に変わった。

「人が話し掛けているのに…無視しなくても良いじゃないですか!」

『人が話し掛けているのに』?
俺は一瞬意味が分からなかったが、考え事をしている間に話し掛けていたのだと察しがついた。
(全く聞こえなかったが。)
俺は、そう息を吐くと腕を組んだ。

「人の話を聞いていないのはどっちだ?」

全く、自己主張だけ強くて困る。
俺は、努めて冷静に言った。

「まず、俺は『平畠』だ。スタッフ全員の自己紹介を聞いていなかったのか?名札も付いているだろう。どこに行くかと言ったな?仕事は、マネージャーが『安浦は入場ゲートを教えて貰え』と言ったはずだ。」

俺は、口を挟ませまいと一気にまくし立てた。

「浮かれて人の話を聞いていなかったにも関わらず、自分の話は聞けだと?お前こそ失礼も甚だしい。本当にセンター試験受かって大学に行ける程の頭があるのか?」

確か、内田さんが公立大学在籍中だと言っていたのを思い出し、溜息混じりに嫌味を盛り込んだ。


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