ぼくのピペット
扉を開けると、そこには想像もしなかった人物がいた。
予想していた人物――友達か宅配便の人だと思っていた――の身長よりも遥かに小さい、しかも少年だった。
見るからに小学生くらいのその少年は、細身のジーンズに暗い灰色のコートを羽織り、寒そうにしている。
足元にはシンプルなデザインのスニーカーを履いている。
所々擦れていたり泥が付着していたりするなど、そのスニーカーからはよく外で走り回っていることが伺えた。
暗い場所でも栄えるほどに白い肌は、病弱を思わせるような青白いものとは別物だ。
たとえばご飯に一番合うのが漬物だったり、外に出る時には家の鍵を閉めなければいけなかったりするような白。
当たり前だと思えるような白である。
もしもこの少年の肌の色が黒かったり普通の肌色だったら、彼は彼ではない、また違う人になってしまうだろう。
それほどに、彼にその肌は似合っていた。
もちろん彼との面識は一度もない。
正真正銘初対面の知らない少年である。