ぼくのピペット
 

なので仕方なく水商売をすることになったのだろう、と私は考えている。

水商売のことはよく知らないが、彼女がなるには打って付けの仕事だ。

それなりに顔は綺麗だし、スタイルもいいし、気も強く、器量もいい。

当時はまだ二十歳前半だったから、向こうが彼女を拒む理由もなかったのだろう。






ポトリ、とメモにこぼれ落ちた水滴で我に帰った私は、脱衣所に向かった。

そこで大きめのタオルを一枚とり、顔と頭をわしゃわしゃと拭いた。

今度は大きめのバスタオルで身体全体の雨水を拭き取る。

そうして適当な服に着替えると、私はリビングのソファーに突っ伏した。

ソファーの革がペタペタ肌にくっついて気持ち悪い。

退屈だ。


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