手紙
「そんで、沖田総司のこと考えてたでしょ」
「考えてないよっ最近海行ってないなーって思っただけ」
「ふーん。ま、とにかく早く忘れなって」
言いながら立ち去る妃菜に、もう聞こえないと分かりつつも小さな声で返事した。
「分かってるよー」
無駄だってわかってる。
こそこそと手紙を書いて、流しはしないものの、海を眺めて沖田を想う。
でも、睦月にとって、他の男と会ったり、メールしたりするほうが無駄だと思うのだ。
沖田を忘れるために、無理やり他の男を好きになろうとするなんて、始めから無茶な話。
結局は沖田が好き。
会ったことはないけど、直接話したこともないけど、好きなのは確実なんだ。
「好き・・・・・」
海に向かう睦月の声は、教室の騒がしい音にかき消されていった。