手紙
海に来ると、現実から遠く引き離された感じがする。
睦月にとって、海はそんな不思議な場所になっていた。
沖田のことしか考えられなくなる。
学校も、勉強も、家のお手伝いも、何も考えない。
海は睦月の癒しだった。
「今回も、無事に届きますようにっ」
ゆっくりとビンを海へ放し、今日も夕日が沈ずむのを見届ける。
あの日から海に来ると必ず真っ暗になるまでその場から離れることをしなくなった。
海はどこまででもつながっている。
沖田のいる時代にもつながっている。
だから、太陽だって同じなんだ。
自分が見ている太陽と、沖田が見ている太陽。
そう考えると、目が離せなくなってしまったんだ。
だが、睦月はもうゆっくりと時間を流している場合ではなかった。