手紙
一瞬にして睦月の顔が固まった。
そして、みるみる赤くなっていく。
夕陽のせいなんかじゃない。
これは完全なる沖田のせいだ。
「は、初めて名前・・・・あたしの名前呼んでくれた・・・」
紙の上にただ並ぶ、沖田が書いた「睦月」という文字。
たったそれだけで鼓動が早くなる理由を、睦月はまだ知らない。
「沖田さん・・・・・」
自分がびしょ濡れなことも忘れ、太陽の沈む海を見つめる。
いや、睦月が見ていたのは海なんかじゃなかった。
海の向こうの、沖田のいる江戸。
見えるはずないのに、睦月は目が離せなかった。