シンデレラにガラスの靴を
「逃がさないよ〜?」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
聞こえないよ〜、聞こえない。
「あれ〜、無視しちゃう?」
無視なんて許さない、とでも言うようにガシッと腕を掴まれた。
「ひぃぃっっ…………!!」
声にならない叫びが静寂を破る。
ゆっくりと視線を上げ、嫌々ながら振り向く。
「うん、いいね〜。」
そこにいたのは、すごく綺麗な男の人。
左目の目尻にある泣きぼくろとさらりと揺れた胡桃色の髪が、なんだか印象的だった。