シンデレラにガラスの靴を
「イヤなのはわかるんだけどさ、壁にはりつきながら歩くのはどうかと思う。」
今はちょうど授業が終わり、調理室から帰って来る途中。
わたしにとっては“地獄”とも呼べるであろうこの道のり…。
そんなこと口にしたら、間違いなく沙紀に大袈裟だって笑われる。
だから、絶対に声には出さない。
視界には入れないようにしてるけど、耳から入ってくる低音ボイスと男子特有の匂いだけは防げない。
沙紀は、低音ボイスは違う意味でにゾクゾクするし、匂いなんて香水の香りしかしないと言う。
何年も一緒にいるのに、全くと言っていいほど
わたしの気持ちがわかってない。