知らない夜
「こんな時間に女の子ひとりは危ないよ。」
よく見ると犬にはハーネスがついている。どうやら盲導犬のようだ。ということはこのお兄さんは目が見えないのかな、それなのに私がひとりだってなんでわかったんだろう。
「お兄さん目が見えないの?」
「うん、生まれつきね。」
「じゃあ、
夜の暗さを知らないんですね。なんだか羨ましい。」
「面白いことを言うんだね。夜って怖いの?」
飲み込まれそうな暗い川、とても冷たい鉄のワイヤー。不安と寒さ。この短時間で十分に頭が冷えた気もする。
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