知らない夜

「あと、目が見えないってどんな感じですか」
「じゃあさ、逆に目が見えるってどんな感じ?」
「え、それは、。」
「わからないよね。僕も同じ。目が見えたことがないから、違いもわからないや。ただ、好きなひとの顔と、空の色と、今日みたいな夜の月が見えないのはちょっと残念かな。」
見えないはずの両目は確かに、月のほうに向かっていた。
「すみません。」と声をかけられた。さすがに駅前は明るいし、今の格好は目立つ。声をかけてきたのはおまわりさんで、お兄さんが私との関係とかを聴かれていた。迷惑をかけると思い、私は駆け出す。
呼び止める声を無視して人気のないほうに向かった。ちょうどお店から出てきたひとたちに紛れて逃げ切った。吐き出す息が白い。走っている途中、ポケットでちゃりんと音が聞こえたのでまさかと思い、手を入れてみる。中に550円入っていた。さすができる弟だと感心して、喉が渇いたのでコンビニに寄る。
コンビニでホットレモンと、ほしうめ、ホワイトチョコレートを買って外へ。空を見上げてみる。ちょうど月が隠れた。まだ、夜は続く。
< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop