夜の海、盲目
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「ねぇ魅歩。俺、小さい頃に見た絵本が忘れられないんだ。」
「へぇどんな話?」
「山奥に夫婦が住んでいてね、夫婦は二人っきりで生活してるんだ。何もかも二人っきりで。奥さんは旦那さんを本当に愛しているから、旦那さんが誰とも関わらないように仕組んだからなんだけど。なのにある日、ついに旦那さんは応えられなくなって都会の町へ逃げてしまう。奥さんはどうしても旦那さんを見つけたくて、お空になって探すんだ。やっと見つけたと思えば、旦那さんはすごく楽しそうに、幸せそうに暮らしている。その姿をみて奥さんはもう、旦那さんを連れ戻すことをやめてずっと旦那さんを見守ることにした。それで話は終わり。」
「不思議な話ね。」