素直になれなくて(仮)
―――――…
―――…
―…
「……さん……ねーさ…」
暖かな日差しの中、誰かが肩を揺さぶる。
「…ん―…?」
私は、ゆっくりと目を開けた。
「おねーさん、起きな!」
声とともに視界に飛び込んでくる男の人。
「…だ…れ?」
うたた寝とはいえ、寝起きの頭はすぐには働かない。
「私は、このカフェの店長だよ。それよりも君、入学式なんじゃないの?」
その言葉に、慌てて腕時計に目をやる。
時間はすでに、入学式が始まる20分前になっていた。
「―っっ大変!店長さん、お会計っ!」
私は慌ててコートを着て、鞄を手に取った。
「気を付けて行ってらっしゃい!」
その声に振り返ると、店長が笑顔でこちらを見ている。
「ありがとう御座います」
私は一度お辞儀をして、足早に大学へ向かった。