【企画】冬のある日の物語
「雪亞ー?」


「んー?」


「…ちょっと話したいことあんだけど」


「何?急に改まって」


「…あの、さ…俺の病気のことなんだけど…」


あ、教えてくれるんだー


私はそんな軽い気持ちで構えていた



















「…俺、癌なんだ───」
















「…え?」


…が…ん…?


「…嘘…でしょう?」


嘘よ、嘘に決まってる


唯斗のいつもの嘘なんだわ


心とは裏腹にどんどん唇が乾いていく


「本当…なんだ。黙ってて…ごめん」


そこにはいつもの憎たらしい唯斗なんていなくて


ただただ、残酷な唯斗がいた


「…俺、今日はもう戻るわ」


「…あ」


引き止めたって、話す言葉が見つからない


結局、唯斗はそのまま自分の病室に戻っていった


「…うっ」


ポトリ ポトリ


ふとんにしみを作る


目から水が落ちる


あぁ、やっぱり私は






…唯斗が好きなんだ






…だから私は


出来る限り唯斗のそばにいることを誓った










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