しゃぼん玉。
〝まだちっこいな。〟

初めて言われた、〝私〟に対しての言葉だった。
今まで

―― 色白い ――

って言われ続けた。
だけど、陽のあたらない場所で日焼けするわけない。

私は素直に嬉しかった。
あの時のあの言葉は、私の一生の宝物。
あの人は、ただ思ったことを言っただけかもしれない。
あなたには、ただの他愛ない言葉かもしれない。
だけど私はずっと〝私〟に向けられた言葉が欲しかった。

私は咄嗟に

――ありがとぉ

って言った。
そしたらね、あの人笑ったの。

〝お前面白いな〟

って。
その日はずっと話してた。
ご主人は客足が減ると、私を置いている湖を立ち入り禁止にして、休ませてくれた。

ご飯はスープ。
夜だけしかご飯は食べさせてくれなかった。

いつもはお腹が空いて寝付けなかった夜、私は初めて寝ることが出来た。
私が寝返りをうつたび、心地好い水の音が聞こえて、子守唄を歌ってもらったあの頃を思い出した。

…ぴしゃん、
ぴしゃん

♪~♪~
おやすみ、可愛い私の子
今夜はどんな夢を見るの?
あなたが寝れるまで
歌いましょう
楽しい夢が見れますように
幸せな夢が見れますように
あなたが寝れるまで
キスしましょう
~♪~♪
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