しゃぼん玉。
「…ろ!」

……ろ?
ろ、ってなぁに…?

でもこの声はご主人。

「…ご、しゅじん?」

重たい身体を起こして見上げると、見えたものは茶色い線だった。

…聞こえたのは何かに打たれている音。

分かったのは、私が何かに打たれたということだけ。

…ばしゃっ

私の背中に当たるものが、冷たくて気持ちいい。

あぁ……、これは檻か。

何故か私は冷静だった。
連れて来られて3ヶ月が過ぎて少し経った頃だった。

今日は101日目。
あの変わったお客様のことを考えていたのか、寝過ぎたみたいだった。

表情を変えない私に、ご主人はだんだん顔色を変えていった。

「お前は痛みを感じないのか」

感じないわけがない。
私だってこれでも生きてるんだ。
こんな状態になってでも、命はあるんだ。

そう怒鳴ってやりたいのに、心の何処かで〝ムダだ〟と諦めている私がいた。
そんな私を見て苛ついてきたのか、ご主人は私を殴り続けた。


――これが、
〝悪夢〟の
始まりだった――
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