いつか王子様が
フランクフルトに金魚すくい、綿菓子

そして夏の風物詩のかき氷。

たくさん並んでいる露店が

私の心を引きつける。

その心を「残金五百円しかないんだから」
と戒めた。

ひと通り回ったが、

友達の姿はない。

私がもと来た道に戻ろうとしたとき

背後からの男の声が、私の足を止めた。

「ちょいと、そこのお嬢ちゃん?
いいものあるよ。見てかない?」

いいもの?

わずかな好奇心が私を振り向かせる。

振り向いた先には、

青いビニールシートに

マントをかぶった男がパイプ椅子に座っていた。

どうやら物売りのようだ。

男の前にフリーマーケットに売ってそうな

雑貨やら文房具やらが無造作に置かれている。

それより私は男の風貌が気になった。

マントをかぶった男から見えるのは

青白い手と血色の悪そうな頬だけ。

サングラスにマスクをしている。

ひどい花粉症の人のようだ。

けれど、マントまでかぶって

どんな顔つきか体つきかも

わからないので、そのまま街中を

歩いたら警察に通報されるに違いない。

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