【完】あなたの指先で愛して
あなたの指先で愛して
「あ…のっ……雅也(マサヤ)……」
「今、話しかけんな」
必死でプログラミングしている時に話しかけんなよ…分かんなくなるだろうが。
よく言えば控えめ。
悪く言えばハッキリしない、うぜえ態度。
俺の彼女清香(キヨカ)。
「あっ…ゴメ、……」
またいつもみたいに目に涙ためてるんだろ?
付き合って四年。
もう、声だけで分かるんだよ。
「無理しないでね…それじゃあ」
清香は、腕にかけてたスプリングコートを羽織ると、パタパタと悲しげな音を立てながら、俺の働くオフィスから出て行った。
俺のデスクの隣には、ほうほうと湯気を立てる、ホットチョコレートが置かれていた。
< 1 / 14 >