【完】あなたの指先で愛して
パタンッ……
「ハア…うぜぇ……」
俺は、清香が閉めた扉に向かって、言葉を吐いた。
いつからだろう。
清香がうざったく感じたのは。
清香と付き合いだしたのは四年前。
一つ下で、俺の会社に入社した清香。
俺とはまったくの正反対の性格だった。
「雅也さん、遅くまでお疲れ様です」
清香は必ず、残業する俺に、ホットチョコレートを作ってから帰るんだ。
「甘いものって、元気でますから」
そう言って、猫舌の俺に合わせて、少し冷めたのホットチョコレートを、いつも。
「ありがとう」
俺はそう言って、清香の優しさをその都度受け止めた。