【完】あなたの指先で愛して
清香を最後に愛したのはいつだっただろう。
社会人生活も五年目を迎え、責任も一人で背負わなくてはいけなくなった。
自分のことで精いっぱいで、清香のことを考える時間さえ惜しかった。
そんな時だった。
朝の朝礼で、清香の退社が告げられたのは。
残業する俺の隣で、デスクの上を片づけ続ける清香。
俺はパソコンのタイプが叩けないでいた。
俺に何も言わなかった清香。
なんでだって、怒りがふつふつと込み上げて、気が気じゃなかった。