伝えておけばよかった(短編)
「そう。じゃあ」


 いって、芽生がおれに身体をよせた。

 ぴったりとくっついて、おれをみる。



「こうすれば、あったかいでしょ?」

「・・・あったかいって・・・」


 これはねらっているのか、天然なのか、わからない。

 そのとき、触れ合っている芽生の上着のポケットから振動が伝わった。

 携帯だ。



「おれには、携帯いらないとかいって、自分もってるし。・・・でれば? まだ、振動してる」

「でないもん」



 すねたように、芽生はいった。

 そして、泣きそうに目が潤んだ。

 今にも、涙がこぼれそうな大きな目だ。




 泣き虫はかわらない。
 

 
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