伝えておけばよかった(短編)
「ありがとう。でも、何も学校ではなにもないよ」

「そっか」

「遼は変わらないね。そういうとこ、いいと思う」

「それは、ほめてるのかよ?」

「もちろん」

「芽生はちょっと変わった気もする。ほら、この前、部活中、グランドからおまえに気がついて、手ふったのに、思いっきりシカトしただろ」

 
 校庭の片隅に、芽生がいて、じっとおれのほうを見ている気がして、手をふった。

 でも、芽生はそのまま、踵を返して、どっかに消えたんだった。

 あの態度は正直、むかついたんだ。

 今思い出した。



「あ、あれは」


 笑っていた芽生が唇をかんで、うつむいた。

 また、泣きそうな顔する。


 しまった、泣く。

 
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