伝えておけばよかった(短編)
「わるい。怒ってないから。もう、泣くなって」



 やっと真っ赤だった目が、普通になってきているのに、泣かれたら困る。

 どうしていいか、わからなくなる。



「泣いてない! 寒いから歩く!」


 叫ぶようにいって、立ち上がる。

 そのまま、すたすた歩き出す。



「ちょ、待てって!」


 自転車を押して、あわてて、追いかける。



 すねたのか、おこったのか、わからないけど・・・勘弁してくれよ。



「待てって! こら、芽生」

「待たない!」


 競歩の選手かっていうくらい、早足で芽生はどんどん進んでいく。
 
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