伝えておけばよかった(短編)
 街灯にぼんやりと照らされた坂道。

 そこをずっと上っていくと、桜の木がいくつも植えられた広場があるんだ。

 小学生の頃は、春の新入生歓迎遠足でよくいった。

 中学になってからは、そういえば、きていない。

 桜の季節は、花見客でにぎわうが、今はつぼみの段階。

 当然、だれもいないだろう。

 

「いってみたい」



 坂道の先を見上げながら、芽生がつぶやいた。

 いうと思った・・・けど、無駄な抵抗してみたりする。



「いく? くらい、さむい、きついからやめとかない?」

「いや。・・・いっしょにきてくれるっていったでしょ?」



 すがるような目をしていわれれば、おれは黙って、自転車をおこすしかなかった。








 
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