伝えておけばよかった(短編)
 
 息が切れる。

 坂道の、二人乗りはきつい。

 けど、男としての自尊心と、根性で上りきる。



「到着!」



 元気よく、自転車の後ろから、芽生が飛び降りた。



「ね、遼。夜景見えるよ、きれい。きて」



 手招きされても、



「・・・はぁ・・・きつ。・・・はぁ」



 情けないけど、おれは自転車を止めて、その場に座り込んだ。

 芽生もおれの横に座り込んだ。



「スカートよごれる、ぞ」

「平気」



 冷たい夜風が二人を包む。

  

< 19 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop