伝えておけばよかった(短編)
「ごめんね」


 もう一度いって、自分の膝に顔をふせた。

 見えない表情。

 そして、ぽつりぽつりと話し出した。



「私、ずっと・・・ずっと、変わらないでいられると思ってた。

 だから、伝えなくても、まだ、いいかなって・・・思ってた」

「?」

「・・・ねぇ、遼」

「なに?」

「新しく、何もないところから始めるって・・・大変かなぁ・・・」

「?」



 わけがわからず、首をかしげるおれの手を芽生がつかんだ。

 ぎゅっと、にぎりしめる。



「私、四月にはここからいなくなっちゃう・・・」

「え?」



 思ってもいなかった言葉に、固まってしまう。
 
 

「それって・・・」

 






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