伝えておけばよかった(短編)
「お父さん、転勤きまっちゃったって・・・」
「うそだろう・・・」
おれは呆然と、そうつぶやくことしかできなかった。
芽生とおれは、幼なじみで、赤ちゃんのときからの付き合いだ。
おれが生後二ヶ月くらいのときに、妊娠中のおばさんと一緒に家族で転勤してきたのだと、母さんに聞いたことがあった。
社宅ぐらしで、入っていく人もあれば出て行く人もいて、でもおれたちは、幼稚園も小学校も一緒に通って、中学にも同じところに通っている。
特別に考えたことはなかったけど、ずっと、ずっと変わらないって思っていたんだ。
毎日、同じように、同じ場所、同じ仲間で、日々を過ごしていけると思っていた・・・子供な、おれたち。