伝えておけばよかった(短編)
 急にまた意識した。

 さっき、キスされた桜色の唇を思い出す。

 まずいおれ、顔が赤いかも。

 ふとみると、芽生も顔が赤い気がする。

 しばし、見つめあい・・・ふいに芽生は横を向いた。



「ねぇ、佐藤さんにわるいことしちゃったかな?」



 佐藤? 誰? もしかして、部のマネージャーの佐藤のこと?

 よく気がついて、タオルとか持ってきてくれるから、助かるんだ。

 でも、いきなり、なんで佐藤?


 
「なんで? 佐藤?」

「・・・だって、いつも放課後一緒にいるじゃない。いっぱい話したりしているし」

「? そりゃ、マネージャーだし。クラス一緒だし」

「付き合ってるんでしょ?」

「はあぁぁぁ!?」



 そんなわけないじゃん。

 おれ、誰かと付き合うとか、好きとか意識して考えたことないし。

 よく同じ部活の、花田とかからはお子様とかいわれたりもしてるけど、気にしたことなかった。

 だから、お子様っていわれるのかも。

 

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