伝えておけばよかった(短編)
「遼くんも、乗って」
おばさんが言う。
おれは首を振った。
「いいです、おれ、自転車あるから」
「そう? 大丈夫?」
「平気です」
芽生はおばさんに背中を押されながら、助手席に乗り込む瞬間、おれのほうをみた。
唇が動いて、
ありがとう
と、つぶやいた気がした。
車は走り去って、一人のおれ。
自転車に乗る。
急に、胸の奥に、切なさというか、寂しさというか・・・苦しい、どうにもならない気持ちがあふれ出してきた。
でも、おれは無力でなにもできないことわかっている。
無我夢中で自転車をこいで、その気持ちをかき消すことしかできなかった。
おばさんが言う。
おれは首を振った。
「いいです、おれ、自転車あるから」
「そう? 大丈夫?」
「平気です」
芽生はおばさんに背中を押されながら、助手席に乗り込む瞬間、おれのほうをみた。
唇が動いて、
ありがとう
と、つぶやいた気がした。
車は走り去って、一人のおれ。
自転車に乗る。
急に、胸の奥に、切なさというか、寂しさというか・・・苦しい、どうにもならない気持ちがあふれ出してきた。
でも、おれは無力でなにもできないことわかっている。
無我夢中で自転車をこいで、その気持ちをかき消すことしかできなかった。