伝えておけばよかった(短編)
 三月の終わり。

 芽生たち家族は転勤していった。

 ここよりも、ずっと都会へ。

 

 あれから芽生とは話す事もあったけど、キスしたことや告白の話はしなかった。

 故意にさけていたわけではないけど。

 他愛のない話をするだけだった。



「またね」

「うん」


 携帯のメアドを交換して、自然と手を伸ばして、つないだ手を離したくはなかった。

 でも、そんなことはできなくて・・・。



 芽生はいってしまった。



 空き室になった部屋の前を通るとき、ふいに芽生が顔をだすんじゃなかっておもうことがある。

 そんなことは、もちろん、ないんだけど。

 見慣れた景色に、いつもいたはずの、芽生がいない。



 いなくなってから、鮮やかに、くっきりとおれの気持ちは浮かび上がってきた。



 おれも、芽生が好きだ・・・と。


 
 
 

 

 
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