伝えておけばよかった(短編)
3
「わかった。なんだかしらないけど、ついてく」
「ありがとう」
おれの言葉に、花が開くみたいに、芽生は笑った。
どきっとして、思わず、見ほれてしまった。
らしくない、おれ。芽生に、なに、ドキドキしてるんだ。
ぶるっと頭を振って、平常心を取り戻す。
久しぶりに、まともに接しているから、とまどってるだけだよ、おれは。
そう頭の中で言い聞かせているおれの手を、ひっぱる。
「行こう」
「行くけど、ちょっとまって。・・・携帯と財布」
部屋に無造作に置いたままの、それをとりにいこうとすると、ぐいっと芽生が引き止めた。