伝えておけばよかった(短編)
「あー、ええっと、どこいくわけ?」


 平静を装いながら聞く。

 おれは、芽生に自分の自転車に乗れっていうことすら忘れている。



 触れ合っている部分が温かい。



 三月の始め、春は近く、今年の冬は温かかったけど、やはり夜は肌寒い。

 でも、おれは、寒さを忘れていた。

 むしろ、変にのぼせそうで、熱いくらいだ。

 原因は背中に、ぴったりと頬までくっつけている芽生だ。

 いったい、どうしちゃったんだよ?



「とりあえず、コンビニ」

「いいけど、おれ、財布ない」

「私、あるからいいよ」
 

 おれにはおいてこさせたくせに、自分はしっかりともっているんだ。

 それなら、遠慮なくおごってもらおう。

 


  
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