伝えておけばよかった(短編)
 ペダルを、力強く押して漕ぎ出す。

 芽生は思った以上に軽くて、負担を感じなかった。

 やっぱ、女の子なんだなぁって、思った。



 小さい頃は、泣き虫で、わめくし、コザルみたいだと思っていたんだけど。

 そういえば、うちのクラスにも、色気づいたやつらが芽生のこと、萌ぇって感じで可愛いなんていっていたような気がする。

 意識して、芽生のことみたことはなかったけど、改めて考えてみると可愛い部類に分別されるんだろう。

 萌ぇかどうかはしらないが、ちっちゃいし、目が大きいし、髪の毛は小さい頃触った感覚では柔らかくてふわふわしていたな。

 唇は桜色だし。

 背中から回された腕は細くて、華奢だ。



 意識すると、なんだか運転が怪しくなる。



「・・・っと」

「きゃ」



 石ころにのりあげて、ぐらついたけど、サッカー部の脚力でどうにか持ちこたえた。


「ごめん、平気だった?」

「うん。でも、びっくりした。落ちちゃうかと、思った」


 ぎゅっと、しがみつく力が強くなった。
 
 
 

 

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