恋愛LEVEL

それからあたしたちは水族館に向かった。

平日の水族館は空いていて、ゆっくり見てまわる事ができた。

世界の淡水魚コーナーであたしは大興奮だった。

「あぁぁぁ!ピラルクだぁ!デカイ!!」

「あっちはガーだ!!デルヘッジとオルナティもいる♪」

ガラスにおでこをくっつける勢いだった。

「ちょっ、ちょっと千秋?お前マニアックすぎない?」

「へ?」

「普通…水族館にきたら、イルカ可愛い!とかペンギンだぁぁ!とかじゃないの?」

「あ…そうなんですか?あたし肉食の淡水魚が好きで…」
あたしは水槽を眺めながら言った。


「…なんかますます千秋が好きになったかも…」

先輩はあたしの後ろから抱きしめながら低い声で囁いた。


先輩の香水の香りがする…
甘くない爽やかな香り。

あたしは…恥ずかしくて俯く。


「先…輩。あたし…」

「ん?」

「あたし…先輩の事…好きとかそういうの…まだ…ナイです…」

「うん…知ってる」

「……」

「俺焦ってるように見える?」

「…そうは思いません」

「でしょ?こういうふうに抱きしめられて嫌?」

「…嫌ではないですけど」

「でしょ?だからもう少しだけ…」

先輩はあたしの肩に顔を埋めた。

「千秋、甘い匂いする…」

「シャンプー…かな」

「…ん。女の子の匂いだね。…ヤッベ。めちゃくちゃキスしたくなってきたかも」

「えぇっ?!」

あたしは先輩から逃げようとする。

「大丈夫。しないよ?だって…」

先輩はあたしから身体を離した。

「……?」

「…遠足のお子ちゃま達がいっぱい来たから」

先輩は淡水魚コーナーの入口にいる子供達を指差した。

みんながこっちを見ている。


「…ハハハ」



あたしは苦笑するだけだった。
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