ひなたぼっこ~先生の、隣~【続編】
「え…どうしたの?急に…俺、何か言った…」
「この間も今も、進路の話を振ると立川くん悲しそうな表情見せるから」
「え…あ…」
立川の目が泳ぎ、口元を抑えた。
「医学部ってすごくレベル高いし、立川くん家は病院だから余計にプレッシャーも凄いだろうけど、立川くんなら大丈夫!!未来の患者として応援してるよ!」
「未来の患者って…妹尾さん、病気になる予定なの?」
さっきまで動揺をしていた立川に、笑みが溢れた。
「え!?あ…いや、そういうわけじゃなくてー…病気になったら、立川くんに診てもらいたいなぁ…って意味で」
今度は、泰葉が動揺している。
「じゃあさ、もし俺が本当は医者になんかなりたくないって言ったら?」
「え?」
「確かに、向いているかもしれない。けど本当は、他にやりたいことがあるって言ったら?」
「…」
立川の問いに、一瞬静まり返った。
「じゃあ、何で放課後に図書室で勉強しているの?」
常に、学年トップの立川くん。
「立川くんの成績なら、よっぽどレベル高い大学じゃない限り、そこまでして勉強しなくても大丈夫だよね?」
頭の回転も速くて、皆をまとめるのも上手で、洞察力も鋭い。私から見ても、完璧な人だと思う。
「頭の良い立川くんならその時間を、本当にやりたいことの時間に使うはずだよ」
「…」
「って思ったから、立川くんは医学部を目指してるんだと思ったんだけど…難しい顔したりしてるのは、そのプレッシャーからだと勝手に思い込んでたんだけど…」
え…もしかして、違ったの?
本当に、立川くんには他にやりたいことがー…
「…いや…そっかー…そうかもね」
立川がクスッと笑った。
「え?」
「さすが妹尾先生。図星をついてくる」
「え!?図星って…って、また先生ってー…」
「妹尾さんが俺の未来の患者なら、俺は妹尾先生の生徒第一号でいいよ」
「生徒!?」
「今、進路相談のってくれたよね」
「え…今の進路相談だったの?」
「一応」
そう笑って言った立川の表情は、さっきよりも明るい。