課長さんはイジワル
第111話 初大商いなのか?!
佐久間主任がNYに発ってから1カ月。
課長に彼女ご辞退宣言から1カ月。
すっかり気の抜けた私は3人掛けのブースに陣取って、これまたやる気のなさそうなまったり相場のモニターとにらめっこ。
「あ~あ。今日も商いなし、か」
後5分で場が閉まると言うその時、滅多にパッシングしないモニター電話が点滅していることに気付く。
客だ!!!
慌てて、受話器でモニターを叩く。
「はい。杉原です」
被り付くように受話器を握り締める。
「ああ。マルバツ銀行の福井ですぅ。例のフローター(変動利付債券のこと)、まだあるかのぅ?」
急いでインベントリーを引き寄せ、在庫を確認する。
ある!!
あるよ!フローターちゃん!!!
取り扱いが面倒だからと、なんとコミッション(報酬)は破格の1円20銭(120万円)!
ダメもとで、マルバツ銀行に1週間前にオファーしていた玉(ぎょく)だ。
「ディーラーに確認します!少々お待ち下さい」
興奮冷めやらぬまま、ディーラーのブースに駆け込む。
「押尾さん!このフローターですが、『引け』で出ますか?」
胸のドキドキが止まらない。
杉原、入社以来、初めての単独での大商い成立です!!
ところが、押尾さんってば、チラッとインベントリーを見るなり、「ああ。これ。これはマルね(証券用語で『ナシ』)」
「ええっ!?マル!!なんでっ!!買ってくれるって人が……」
「しょうがないでしょ?マルはマルなの」
「しょうがないとは何ですか!!こっちは独り立ち後の初の大商いで!!」
次第にヒートアップしている時に、背後から「あー、杉原君」と、誰かがチョンチョンと肩を叩く。
「待ってて下さい!今、ディーラーと交渉中ですっ!!」
「だがね、杉原君……」
背後の人物はなおも食い下がる。
ああん、もう!!
「なんね!!しゃーらしか!!」
鬼の形相で振り向いた時、そこには本部長が!
オーーーーー……ノォーーーーー……
サラサラサラ………(杉原、灰化現象のち、消滅中)
コミッション120万よりも、来月の給料の減給に怯える私に、本部長がもっと恐ろしいことを告げる。
「お取り込み中、すまんがね、杉原君。専務取締役がお呼びだ。一緒に来てもらえんかね」
課長に彼女ご辞退宣言から1カ月。
すっかり気の抜けた私は3人掛けのブースに陣取って、これまたやる気のなさそうなまったり相場のモニターとにらめっこ。
「あ~あ。今日も商いなし、か」
後5分で場が閉まると言うその時、滅多にパッシングしないモニター電話が点滅していることに気付く。
客だ!!!
慌てて、受話器でモニターを叩く。
「はい。杉原です」
被り付くように受話器を握り締める。
「ああ。マルバツ銀行の福井ですぅ。例のフローター(変動利付債券のこと)、まだあるかのぅ?」
急いでインベントリーを引き寄せ、在庫を確認する。
ある!!
あるよ!フローターちゃん!!!
取り扱いが面倒だからと、なんとコミッション(報酬)は破格の1円20銭(120万円)!
ダメもとで、マルバツ銀行に1週間前にオファーしていた玉(ぎょく)だ。
「ディーラーに確認します!少々お待ち下さい」
興奮冷めやらぬまま、ディーラーのブースに駆け込む。
「押尾さん!このフローターですが、『引け』で出ますか?」
胸のドキドキが止まらない。
杉原、入社以来、初めての単独での大商い成立です!!
ところが、押尾さんってば、チラッとインベントリーを見るなり、「ああ。これ。これはマルね(証券用語で『ナシ』)」
「ええっ!?マル!!なんでっ!!買ってくれるって人が……」
「しょうがないでしょ?マルはマルなの」
「しょうがないとは何ですか!!こっちは独り立ち後の初の大商いで!!」
次第にヒートアップしている時に、背後から「あー、杉原君」と、誰かがチョンチョンと肩を叩く。
「待ってて下さい!今、ディーラーと交渉中ですっ!!」
「だがね、杉原君……」
背後の人物はなおも食い下がる。
ああん、もう!!
「なんね!!しゃーらしか!!」
鬼の形相で振り向いた時、そこには本部長が!
オーーーーー……ノォーーーーー……
サラサラサラ………(杉原、灰化現象のち、消滅中)
コミッション120万よりも、来月の給料の減給に怯える私に、本部長がもっと恐ろしいことを告げる。
「お取り込み中、すまんがね、杉原君。専務取締役がお呼びだ。一緒に来てもらえんかね」