課長さんはイジワル
第127話 課長のヒミツ
それから、課長は私をマンションまで送ってくれることに。
ポルシェ911のカレラカブリオレ。
オープンカーなんて乗るの、初めて。
初夏の風が頬に冷たくて気持ち良い。
緩やかなカーブを切りながら、課長が優しく笑う。
「寒くないか?」
「気持ちいいです」
「そうか」
「今度、この車、運転してみてもいいですか?」
「俺は乗らんぞ」
「ひっど!課長の命、私に預けたんじゃないですか?」
「1度はな。だが、2度目はない」
むかっ!
やっぱ、課長はイジワルだ。
むくれている私の隣の席で課長が嬉しそうに笑う。
でも、やがてその笑顔がひき、課長は急に真顔になる。
「由紀、俺は立場上、お前に話すことができないこともある。
今までもそうだったし、恐らくこれからもそうだ」
「……はい」
「だが、不安になったら話し合おう。お前も、自分一人で抱え込まないで俺に話せ。いいな」
「はい」
「OK。では、この話は終わりだ。明日から本格的に忙しくなる。そうだ、榊室長から色々書類を預かっている。明日はそれに目を通しておくように」
榊室長?
ああ!秘書室の澤村専務専属の榊室長ね。
そうだ!
「あの……課長。私、ここに来る前に、澤村専務にお会いしました」
「専務に?」
課長が珍しく驚いている。
「はい」
「……何か、言っていたか?」
「いえ、別に。でも、どことなく、課長に似ていらっしゃる方だなぁと思いました。雰囲気とか、目元とか……」
「そうか……」
課長の目がずぅっと遥か遠くを見ているようで急に不安になる。
「名前も『澤村』っておっしゃってて、あの、もしかして、ご親戚ですか?」
「……ああ。俺の父方の伯父だよ」
「やっぱり!どうりで似ているなぁって思いました」
「俺の本当の親父だからな」
……えっ?!
課長はそれだけ答えると、そのままずっと無言で車を走らせる。
その険しい表情に私は何も言うことが出来ないまま、かける言葉を失っていた。
ポルシェ911のカレラカブリオレ。
オープンカーなんて乗るの、初めて。
初夏の風が頬に冷たくて気持ち良い。
緩やかなカーブを切りながら、課長が優しく笑う。
「寒くないか?」
「気持ちいいです」
「そうか」
「今度、この車、運転してみてもいいですか?」
「俺は乗らんぞ」
「ひっど!課長の命、私に預けたんじゃないですか?」
「1度はな。だが、2度目はない」
むかっ!
やっぱ、課長はイジワルだ。
むくれている私の隣の席で課長が嬉しそうに笑う。
でも、やがてその笑顔がひき、課長は急に真顔になる。
「由紀、俺は立場上、お前に話すことができないこともある。
今までもそうだったし、恐らくこれからもそうだ」
「……はい」
「だが、不安になったら話し合おう。お前も、自分一人で抱え込まないで俺に話せ。いいな」
「はい」
「OK。では、この話は終わりだ。明日から本格的に忙しくなる。そうだ、榊室長から色々書類を預かっている。明日はそれに目を通しておくように」
榊室長?
ああ!秘書室の澤村専務専属の榊室長ね。
そうだ!
「あの……課長。私、ここに来る前に、澤村専務にお会いしました」
「専務に?」
課長が珍しく驚いている。
「はい」
「……何か、言っていたか?」
「いえ、別に。でも、どことなく、課長に似ていらっしゃる方だなぁと思いました。雰囲気とか、目元とか……」
「そうか……」
課長の目がずぅっと遥か遠くを見ているようで急に不安になる。
「名前も『澤村』っておっしゃってて、あの、もしかして、ご親戚ですか?」
「……ああ。俺の父方の伯父だよ」
「やっぱり!どうりで似ているなぁって思いました」
「俺の本当の親父だからな」
……えっ?!
課長はそれだけ答えると、そのままずっと無言で車を走らせる。
その険しい表情に私は何も言うことが出来ないまま、かける言葉を失っていた。