課長さんはイジワル
第130話 課長、テンパる?
「うわっ!」

「きゃっ!」

ドスン!と音を立てて、絨毯張りのフロアに2人とも見事に落ちてしまう。

「大丈夫か?」

課長に抱き起こされて、シュンとなる。

もうせっかくのいい雰囲気が台無し。

2人ともベッドに腰を下ろすと、課長がふーっと溜息をつき、胸がズキンと痛くなる。

「すみません。電気、消したくて」

私の方を向いた課長の顔が、反射した夜景の灯りに照らし出される。

「……悪かったな」

ボソリと呟くと、課長はベッドから立ち上がり、部屋から出て行ってしまう。


もうこの展開はかなりゼツボー的だ。

あ~あ。

なにやってるんだろう、私。

NYに来て復活愛かと思いきや、その日のうちに破局るなんて。

ベッドに突っ伏してうるうるしていると、再び、部屋の扉が開く。

「課長!」

課長はキッチンから持って来たらしい水の入ったコップを私に差し出す。

「ありがとうございます」

ベッドに坐り直してコップをもらうと、水を一口飲んでみる。


ああ……

なんか生き還る。


ほぉ~と溜息を付く、私の横で、課長がものすごい勢いで、ゴクゴクと音を立てて一気に水を飲み下す。


「さっきは、すまなかった。俺もかなりテンパってたらしい」

「課長が?!」

「俺だって緊張するさ」

「意外です。課長が緊張するなんて」


課長はベッドに仰向けになると、私の腕を引いて、その胸に私を抱き締める。

課長の心臓の音が聞こえる。

しかも、すっごく速い!

ドクンドクンと力強い心音。

なんだかすごく落ち着いて来た。

緊張しているのは、自分だけじゃなかったんだ。



「会いたかった……」


課長の呟くような囁きに顔を上げると、課長がそっと私の頬を撫でる。

「今日は着いて早々、仕事をさせて悪かったな」

私は課長の手に自分の手を添えると、首を横に振る。

「でも、少しでも一緒にいたかっ……た」

課長の私の頬を撫でる手が、突然、止まりパタリとベッドに落ちる。

「課長?課長!課長ーーー!?」

まさか、死んじゃったの?

慌てて、課長を揺すってみたけど課長は静かな寝息を立てて眠ってしまっていた。













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