課長さんはイジワル
第142話 信じる。
一瞬、何が起こったのか分からないまま、突っ立っている私に課長が上着を放る。
「榊、連絡ありがとう。迷惑を掛けてすまなかった」
「い、いえ……。随分、お早く……」
「礼は後日、また改めて。行くぞ、杉原」
課長はあわてて上着に手を通している私の肩に手をかけると、強引に部屋から連れ出そうとする。
「奥田取締役、お持ち下さい!専務の奥様よりこちらをお預かりしておりました」
「おふくろから?」
課長は榊室長から箱を受け取ると、「中身は?」と質問を投げる。
「そちらのお嬢様にとのことです」
「杉原に?」
「私に?」
困惑しつつ、課長を見上げる。
「分かった。ありがとう」
お辞儀をしている榊室長を扉の向こう側に残し、私たちは部屋を出る。
と、途端に課長がクルリと私の方を振り向く。
「この……っ、ばかやろぉ!!」
「すっ、すみません!!」
今まで聞いてきた「ばかやろう」の中でも特大級の怒りに体がすくむ。
「迷子になったんじゃないか、何か事件に巻き込まれたんじゃないかとずっと心配してたんだぞ!!」
「はいっっ!本当にすみませんでした!!」
ひぇぇぇぇ~。
こ~わ~い~よぉ~。
プルプル震えつつ、ひたすら頭を下げていると、ふわりと課長に抱きしめられる。
「いや……。すまなかったのは、俺だな。さっき、佐久間から報告を受けたよ」
えっ?
「俺がみんなにお前を同伴することを言うべきだった。すまない」
「そんな!」
謝る課長にあわてて手を振る。
「私こそ、連絡しなくてすみませんでした。それと、さっきの、その……榊室長と一緒にいたことなんですが……」
「ああ……」
急に課長の声が沈む。
そこで慌てて言葉をつなぐ。
「榊室長とは、何もありません!ただ着替えて……」
「信じる」
「えっ?」
「信じるよ」
「……課長」
「お前の言うことを信じる」
私の乱れた髪に、自らの指を絡ませると課長は私の肩を抱き寄せた。
「榊、連絡ありがとう。迷惑を掛けてすまなかった」
「い、いえ……。随分、お早く……」
「礼は後日、また改めて。行くぞ、杉原」
課長はあわてて上着に手を通している私の肩に手をかけると、強引に部屋から連れ出そうとする。
「奥田取締役、お持ち下さい!専務の奥様よりこちらをお預かりしておりました」
「おふくろから?」
課長は榊室長から箱を受け取ると、「中身は?」と質問を投げる。
「そちらのお嬢様にとのことです」
「杉原に?」
「私に?」
困惑しつつ、課長を見上げる。
「分かった。ありがとう」
お辞儀をしている榊室長を扉の向こう側に残し、私たちは部屋を出る。
と、途端に課長がクルリと私の方を振り向く。
「この……っ、ばかやろぉ!!」
「すっ、すみません!!」
今まで聞いてきた「ばかやろう」の中でも特大級の怒りに体がすくむ。
「迷子になったんじゃないか、何か事件に巻き込まれたんじゃないかとずっと心配してたんだぞ!!」
「はいっっ!本当にすみませんでした!!」
ひぇぇぇぇ~。
こ~わ~い~よぉ~。
プルプル震えつつ、ひたすら頭を下げていると、ふわりと課長に抱きしめられる。
「いや……。すまなかったのは、俺だな。さっき、佐久間から報告を受けたよ」
えっ?
「俺がみんなにお前を同伴することを言うべきだった。すまない」
「そんな!」
謝る課長にあわてて手を振る。
「私こそ、連絡しなくてすみませんでした。それと、さっきの、その……榊室長と一緒にいたことなんですが……」
「ああ……」
急に課長の声が沈む。
そこで慌てて言葉をつなぐ。
「榊室長とは、何もありません!ただ着替えて……」
「信じる」
「えっ?」
「信じるよ」
「……課長」
「お前の言うことを信じる」
私の乱れた髪に、自らの指を絡ませると課長は私の肩を抱き寄せた。