課長さんはイジワル
第40話 月曜日の出社は恐いぞ
翌日の月曜日。

朝の資料配りは新人の仕事。

朝一番に出社して、資料を配る。

課長の机の上には、インベントリー(債券の在庫一覧)、日経金融新聞、イールドカーブ表(償還期間が異なる複数の債券などにおける利回りの変化をグラフにした表)が並ぶ。

よっしゃ、完璧!


やがて、次々と社員が出社して来る。

「よっ。杉原君、おはよう」

「佐久間さん!おはようございます!土曜日はご迷惑をお掛けしました」

「あれから、大丈夫だった?」

佐久間さんがスタバのコーヒーとカバンを机の上に置きながら、私に話し掛けてくる。

「はい。大丈夫でしたよ(と、言うことにしとこう)」

「心配してたよ、みんなで。特にケンタッキーのおじさんに土下座して、『一人前になりますから、どうか、ボントレとして置いて下さい!』なんて号泣した時には、驚いちゃったな」

「土下座?」

いや~な予感。

「うん。それから、なんか突然、彼と意気投合したとかなんとか言って、『一緒に飲みましょう』とか言って抱きついてた」

かすかに……記憶の隅っこになんか引っ掛かるものが……。

「どうやら、本部長と間違えてたみたいだね」



げっ!

記憶鮮明!!!


あれはケンタッキーのおじ様だったの?


「でさ、それからがさらにすごい大変でさぁ……」

「佐久間さん……もうそれ位でいいです」


私……

もう……

惨めで惨めで、ミジンコ以下サイズになりたいです。



私が人生最大の落ち込みに消沈していると、背後から「おはよう」と美声の低音が……


「おっ!おはようございます!!」


あいさつをしながら、ドキリと肩が上がる。


数々の失態に後ろを振り向く勇気が無い。


「おはようございます、奥田課長。あれ?どうしたんですか?その顎の湿布は?」



ああ……

佐久間さぁぁぁぁん、そこ、突っ込まないで軽くスルーして欲しかったですぅ~。

やばい展開に私は机に視線を落とし、冷や汗を流す。


「いや、別に」


やっぱ、課長の声はその辺のヤクザなんかより恐いぞぉぉぉぉぉぉ。





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