課長さんはイジワル
第72話 課長、会いたいです
6畳くらいしかない真っ暗闇のシステム室の隅っこに座り込むと、膝を抱え、途方に暮れる。
コンピューター専用のこの部屋には電話もなく、時計もなく、四方が壁で窓すらない。
佐久間主任がIDカードを認証スキャナーにかざしても無反応。
戸を叩いて助けを求めても、帰って来るのは無反応と言う絶望。
外の様子が分からない。
このシステム室に入ってからどれくらい経ったのかも分からない。
「停電したのかもな」
部屋の隅の向こう側から、佐久間主任のため息混じりの声が独り言のように耳に届く。
「佐久間主任、私たち……いつ出られるんでしょうか?」
「さぁな。助けを呼ぶ手段がないのが痛いな」
せめて携帯さえ持っていれば……
せめてあの時、バッグに入れさえしていれば……
もしくは、システム室に行くって、誰かに置き手紙さえしていれば……
はぁ……。
今更、後の祭りだ。
どうしよう。
今日、課長に会えると思っていたのに、こんなことになるなんて。
まさか、このままずっと誰にも気づいてもらえなかったらどうなるの?
いやだ!
課長に……
課長に……
会いたい!
「こんな時さ、奥田課長だったらどうするんだろうな」
「えっ?」
「あ、いや、ごめん。俺さ、いつも何か行き詰った状況になると、どうしても考えちゃうんだよな。
あの人だったらどうするだろうって……」
ふと、課長の仏頂面が脳裏に蘇る。
こんな時に思い出す顔がそんな顔だなんて、課長、恋人として減点です。
でも、心にほんのりと灯りがともる。
「課長だったら、きっと、こう言うと思います。『大丈夫だ。必ず、俺が何とかする』。
何とかなるわけない時でも、きっと課長はそう言う気がします」
答えながら、しみじみと課長の存在を強く感じる。
そんな人だから、きっと恋に落ちてしまったんだって、今、分かったような気がした。
コンピューター専用のこの部屋には電話もなく、時計もなく、四方が壁で窓すらない。
佐久間主任がIDカードを認証スキャナーにかざしても無反応。
戸を叩いて助けを求めても、帰って来るのは無反応と言う絶望。
外の様子が分からない。
このシステム室に入ってからどれくらい経ったのかも分からない。
「停電したのかもな」
部屋の隅の向こう側から、佐久間主任のため息混じりの声が独り言のように耳に届く。
「佐久間主任、私たち……いつ出られるんでしょうか?」
「さぁな。助けを呼ぶ手段がないのが痛いな」
せめて携帯さえ持っていれば……
せめてあの時、バッグに入れさえしていれば……
もしくは、システム室に行くって、誰かに置き手紙さえしていれば……
はぁ……。
今更、後の祭りだ。
どうしよう。
今日、課長に会えると思っていたのに、こんなことになるなんて。
まさか、このままずっと誰にも気づいてもらえなかったらどうなるの?
いやだ!
課長に……
課長に……
会いたい!
「こんな時さ、奥田課長だったらどうするんだろうな」
「えっ?」
「あ、いや、ごめん。俺さ、いつも何か行き詰った状況になると、どうしても考えちゃうんだよな。
あの人だったらどうするだろうって……」
ふと、課長の仏頂面が脳裏に蘇る。
こんな時に思い出す顔がそんな顔だなんて、課長、恋人として減点です。
でも、心にほんのりと灯りがともる。
「課長だったら、きっと、こう言うと思います。『大丈夫だ。必ず、俺が何とかする』。
何とかなるわけない時でも、きっと課長はそう言う気がします」
答えながら、しみじみと課長の存在を強く感じる。
そんな人だから、きっと恋に落ちてしまったんだって、今、分かったような気がした。