課長さんはイジワル
第82話 何も「ナイ」?
まさか、まさか、本当に課長だったの?!
それでも走り出した足は止まるはずもなく。
トイレに駆け込み、ようやく乙女杉原、無事生還を遂げる。
お腹、スッキリ。
気分は、ドンヨリ。
仕方なかったとはいえ、課長の手を振り払ってしまった。
しかも、多分、佐久間主任に抱き締められてたのを見られた。
「どんだけ、運が悪いのよ。私……」
ずぅぅぅぅんと重い足を引きずりながら、トレーディング室に戻る。
椅子に座っている佐久間主任の後ろ姿が、ウィンドウ越しに見える。
戻りづらいけど、まだ場中だから戻らなきゃだよ。
ざわざわとした喧騒の中、扉を開け、自分の席に座る。
う、胃が痛い。
私の席のわずか15cm右隣には、佐久間主任がボードを見ながら、客先に電話している。
隣の席とのしきりがないって、ホント、つらい。
「よっ、杉原ちゃん。大変だったんだって?こいつと一緒に機械室に閉じ込められて」
目の前にあるブースの上から、佐久間主任と同期の押尾さんが顔を出す。
「何かされなかった?こいつに。いてっ!」
佐久間主任が押尾さん目掛けてシャーペンを飛ばし、受話器の通話口を手で覆いながら、「するわけないだろう!ばかか、お前は」とガンを飛ばす。
いつもの佐久間主任の態度にホッとする。
そうか。
あの時、抱き締められたのは気のせいだったんだ。
何もないない、何もない。
良かった。
佐久間主任の言葉に安心して、机の上の金融新聞を片付ける。
と、その時、上から重ねられた佐久間主任の手に息の根が止まる。
それでも走り出した足は止まるはずもなく。
トイレに駆け込み、ようやく乙女杉原、無事生還を遂げる。
お腹、スッキリ。
気分は、ドンヨリ。
仕方なかったとはいえ、課長の手を振り払ってしまった。
しかも、多分、佐久間主任に抱き締められてたのを見られた。
「どんだけ、運が悪いのよ。私……」
ずぅぅぅぅんと重い足を引きずりながら、トレーディング室に戻る。
椅子に座っている佐久間主任の後ろ姿が、ウィンドウ越しに見える。
戻りづらいけど、まだ場中だから戻らなきゃだよ。
ざわざわとした喧騒の中、扉を開け、自分の席に座る。
う、胃が痛い。
私の席のわずか15cm右隣には、佐久間主任がボードを見ながら、客先に電話している。
隣の席とのしきりがないって、ホント、つらい。
「よっ、杉原ちゃん。大変だったんだって?こいつと一緒に機械室に閉じ込められて」
目の前にあるブースの上から、佐久間主任と同期の押尾さんが顔を出す。
「何かされなかった?こいつに。いてっ!」
佐久間主任が押尾さん目掛けてシャーペンを飛ばし、受話器の通話口を手で覆いながら、「するわけないだろう!ばかか、お前は」とガンを飛ばす。
いつもの佐久間主任の態度にホッとする。
そうか。
あの時、抱き締められたのは気のせいだったんだ。
何もないない、何もない。
良かった。
佐久間主任の言葉に安心して、机の上の金融新聞を片付ける。
と、その時、上から重ねられた佐久間主任の手に息の根が止まる。