課長さんはイジワル
第85話 なんやねん
じぃっと見つめられていると、何だかここに座っているのがつらくなる。
課長はあれから一言も喋らないまま。
責められているようで逃げ出したくなる。
「課長、あの……さっきのアレは……」
たまらず自分の方から口火を切る。
だけど、課長の射抜くような鋭い眼光に体が竦み、喉が詰まる。
「ア……レ……は……」
やばい。
言い訳に時間が掛かり過ぎれば、過ぎるほど、発する言葉は嘘っぽくなる。
この沈黙は、致命的だ。
おもむろに課長は席を立ち、私に背を向けた。
「急で申し訳ないが、現地でトラブルが発生した。30分ほどしたらここを出る」
「えっ?!」
「お前に恋人らしいこともしてやれない上、傍にいてもやれない。電話をしていても、この間は上の空だった。本当にすまないと思う」
課長?
いつもの課長らしくない。
いつもだったら、『バカヤロー』って怒って、私が『すみません!』って謝って、それで課長はしょうがないなって笑っておしまい。
それなのに、どうして今は……
「課長?」
おずおずと課長の背中に手を伸ばそうとする。
「これじゃ、お前に愛想尽かされても仕方ないな」
自嘲気味に課長が背中で笑う。
「今まで、本当にすまなかった」
今まで……すまなかった、って。
なんやねん、それ?!
まるで別れを予感させるような課長の言葉に力が抜ける。
でも、次の瞬間、なんかムカムカっと怒りが沸いてくる。
無言のまま、私の体が怒りのパワーでフツフツと煮えたぎる。
「杉原?」
その沈黙に気付いたのか、課長が振り返るのと、ほぼ同時に放った私の平手が、課長の左頬にパッチーーンとクリティカルヒットしてしまっていた。
課長はあれから一言も喋らないまま。
責められているようで逃げ出したくなる。
「課長、あの……さっきのアレは……」
たまらず自分の方から口火を切る。
だけど、課長の射抜くような鋭い眼光に体が竦み、喉が詰まる。
「ア……レ……は……」
やばい。
言い訳に時間が掛かり過ぎれば、過ぎるほど、発する言葉は嘘っぽくなる。
この沈黙は、致命的だ。
おもむろに課長は席を立ち、私に背を向けた。
「急で申し訳ないが、現地でトラブルが発生した。30分ほどしたらここを出る」
「えっ?!」
「お前に恋人らしいこともしてやれない上、傍にいてもやれない。電話をしていても、この間は上の空だった。本当にすまないと思う」
課長?
いつもの課長らしくない。
いつもだったら、『バカヤロー』って怒って、私が『すみません!』って謝って、それで課長はしょうがないなって笑っておしまい。
それなのに、どうして今は……
「課長?」
おずおずと課長の背中に手を伸ばそうとする。
「これじゃ、お前に愛想尽かされても仕方ないな」
自嘲気味に課長が背中で笑う。
「今まで、本当にすまなかった」
今まで……すまなかった、って。
なんやねん、それ?!
まるで別れを予感させるような課長の言葉に力が抜ける。
でも、次の瞬間、なんかムカムカっと怒りが沸いてくる。
無言のまま、私の体が怒りのパワーでフツフツと煮えたぎる。
「杉原?」
その沈黙に気付いたのか、課長が振り返るのと、ほぼ同時に放った私の平手が、課長の左頬にパッチーーンとクリティカルヒットしてしまっていた。