課長さんはイジワル

第９６話 お～い、佐久間主任？！

ルンタタ、ルンタタ、ルンタッタ♪

今日は、佐久間主任とシステム室に閉じ込められちゃうと言うイタイ事件もあったけど、課長に会えたし、ハグもキスもしてもらえたし、良い日だったぞ。

しかも今日の相場は、荒れに荒れて売り買い交錯。

お客さんからの日計り（その日の間に売買を完結させる取引のこと。デイトレーディング）の往復手数料で結構稼がせてもらったし。

あれから、佐久間主任は課長を送って空港に行ったから、きっまずぅい気持ちのまま会うことも無くて、こりゃまたラッキ。


急いで、机の上の書類を片付けて、スキップでエレベーターに乗り込む。

そして、１階に到着しエレベーターから降りようとした時、課長のお見送りから帰って来たらしい佐久間主任にバッタリと会ってしまう。


げげげ。

ま、まずぅい。

「お、お疲れさまでした！」

「お疲れ」

ほっ。

佐久間主任のいつもと変わりない素っ気ない返事にすごくほっとする。


エレベーターに乗り込む佐久間主任の横を、他の降りようとする人混みに紛れてそそくさと通り過ぎようとした時、突然手首を掴まれ振り返る。

「あの……。何か？」

「あ、いや、何でもない」

どもりながら答える佐久間主任の顔は何でもないって顔じゃないし……。

それになんだかすごく驚いたような顔をしているんですけど……。


「佐久間主任……手」

「えっ？」

「手、痛いんですけど」

「ああ。ごめん」

謝罪しつつも、佐久間主任は手を離してくれない。

じっと手を掴んだまま、まるで石にでもなったみたいに、その場に凍りついてる。

おーい。

どうしたんだよぉ、佐久間主任。

と、その時、私はとっさに叫ぶ。


「佐久間主任！危ない！！」

「えっ？」

バシィィィィィィィィィン！

ああ～。

遅かったか。

私の忠告も虚しく、佐久間主任はエレベーターの両ドアに顔を挟まれてしまっていた。