王子とさみしがりやの魔女(仮)
小屋の中。
一人の小さな少女が、必死に背伸びをしていた。
「く・・・・・っ」
椅子の上に立ち、尚も届かない。
仕方ない、と諦め椅子から降りた時、ごんごん、という扉を叩く音が聞こえた。
「何だ、こんな夜更けに」
時計の針は、確かにそろそろ真上を指す頃合だ。非常識といえば非常識である。
「何用だ。僕は今忙しいんだ」
面倒なので帰らせよう、とひそかに決め、扉の向こう側へ向かって言い放つ。
しかし、返って来た言葉は予想を裏切り、
「国王の名代で来た。ここを開けよ!」
その言葉に、少女は眉を顰めた。
何だって国王の名代が、こんな日付の変わる時間帯に?
そうは思っても、少女は立場上国王には弱い―――一般市民よりも、だ。
少女は深々とためいきを吐き、扉を開けた。
と―――・・・・・・。
瞳に飛び込んで来たのは、真っ黒なマントだった。
不審に思い更に見上げると、そこいあったものに少女はそれと分からない程度に目を見張った。
とてもきれいな、きんいろ。
思わず言葉を失ってしまう―――。
それほどまでに、目の前のそれは美しかった。
「・・・・・・・・何用だ」
らしくない、と自分を不甲斐なく思いつつ、青年に尋ねる。
年のころは、20そこそこと言ったところか。
少女の身長が低いことを差し引いても、背が高い。