鳴かぬ蛍が身を焦がす

「先生に…聞いたの?」

先生が好きな作家だから私も好きになった。

きっとこの情報も本人から聞いたに違いない。

私は気まずそうに晃から目線を反らし小さく呟いた。

「――いつも貴方を見てたから」

ドキンッ!

心臓が激しく飛び跳ねる。

「どんな時も先輩だけ見てたからわかるんです」

そう真顔で言って晃は私を本棚に追いやった。

ドキンドキンドキンッ!

晃の顔を見上げ顔を林檎のように真っ赤になった私を、
瞬きせずにじっと見つめてくる。

本棚にぴったり背をつけた私を閉じ込めるように、晃は本棚に両手をついた。

「晃君……」

口から心臓が飛び出そうなほど鼓動が早く脈打つ。

この場から逃げる事も視線を反らす事も出来ない。

いつも笑った顔しか見せない晃の真剣な表情に、私は大きく動揺していた。

「……先輩。目、泳いでます」

そんな私を見兼ねたのかフッと目を細めた晃。

その瞬間、晃の顔が自分の顔に近づいてきた。

――キスされる!

私は目をギュッと閉じ、覚悟を決めた。

……茜色に染まる空。

夕暮れの日差しが誰もいない図書室に差し込む。
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